【一緒に医学】医師目線で見る、損をしない病院の選び方
こんにちは!Dr_Gamingです!
今回は皆さんが損をせずに病院を選んで受診する方法を、医師の仕事内容から一緒に考えてみましょう!
おそらく皆さんが病院を受診するときに考えることとしては
①腕のいい医師に
②短い待ち時間で
③できるだけ低い料金で
かかりたい、ということではないでしょうか?
つまり言い換えれば
①うまい
②早い
③安い
ということだと思います。かくいう私も自分が受診するなら同じことを考えます。
しかし、医師側の目線で見るとびっくりするくらい損な受診の仕方をしている方も多いのです。①②③の達成のためにどうしたらいいか一つずつ考えていきましょう!
①うまい
まず一番最初に「うまい医者」ってなんでしょう?手術が上手な医者?誰も知らないような病気を知っている医者?薬で悪いところをすぐ治せる医者?
多くの方が勘違いなさっているのはここです。「うまい医者」が「短時間で病気を治せる医者」だと思っていませんか?
近くの病院・公立病院・大学病院と病院の種類はたくさんありますが、どこにいる医者でも「短時間で病気を治せる医者」はいません。
医師間では当たり前に言い古された言葉として「後医は名医」という言葉があります。最初に診察した医師よりも、患者さんをその後診察した医師のほうがより正確に診断を下し、治療ができるという意味です。
みんなが知ってる言葉だけあってそれは事実です。なぜなら、時間が経てば経つほど新しい症状やデータが出てきて情報量が多いからです。考えてみれば当たり前ですよね。でも裏を返せば、時間が経たないとわからない病気なんていくらでもあるということなんです。
だから、初めて患者さんをみてすぐ治せる医師なんていないと思っていたほうがいいのです。
では、医師からみて「うまい医者」とはどんな医師でしょう?いろいろ意見があるとは思いますが、私が今まで出会った医師を見て思うのは
1、患者さんの話で重要なところを詳細に聞く話術
2、その患者さんの病気がどういう病気か、使う薬がどういう効果のある薬かを患者さんにわかりやすく説明できる表現力
3、話しているだけで患者さんが安心する穏やかな空気
を持つ医師は患者さんからも、医療者からも評価されているということです。
医師が医療知識を持っているのは当たり前、大切なのはその知識を患者さんが理解しやすく伝えることです。私だったらこういう医師に診察してもらいたいですが、皆さんはどうですか?
②早い
②だけを追求するならもっとも簡単に達成できる方法は救急車を呼ぶまたは時間外受診をすることです。俗にいう「コンビニ受診」ですね。
でも、この方法では①うまい・③安いの達成は非常に難しくなります
医師は大学6年間の勉強を終えたあと、2年間の初期研修、さらにもう2年間の専門後期研修を行い5年目から一人前という扱いを受け始めます。
救急病院では、時間外受診の最初の対応は初期研修中の研修医が行う勤務体系になっていることが多いです。日々の研修で生きていくのに精いっぱいの研修医で①うまいが達成できる余裕がある人はいないんじゃないでしょうか。正直、知識も経験も全く足りていません。
さらに受診する時間が夜だったりすると、診察するのは「当直医」となりさらに診療の質が落ちます。この当直というシステムについては別の記事でご説明します。
https://dr-gaming.hatenablog.com/entry/2019/05/30/112106
さらに、時間外受診をすると病院によって値段はまちまちですが5000円前後の追加料金を取られます。
日中に比べて検査可能な項目が限られるうえ、時間外受診をせざるを得なかった状態と判断されて実施可能な検査は日中の外来受診よりたくさん行いますので受診料がすごく高くなります。そのくせ緊急性がなければ後日日中の外来を受診していただく方針になるので、対症療法の薬の処方で終わることが多いのです。
③の達成など夢のまた夢です。
「救急車を呼ぶ」「時間外受診をする」
今のあなたにとって、大損をしてもその受診が本当に必要なのか胸に手を当てて考えてみてください。
胸に手を当てて考える余裕があるなら明日の通常業務時間に受診しましょう。
では話を戻して、それじゃあ②早いの達成なんてできないんじゃないか?ほぼ正解です。
日本は国民皆保険制度があるすごい国です。格安で日本中どこの病院も簡単に受診できます。さらに、高齢化が進んでいることによって病院の待合にはおじいさんおばあさんがごった返しています。
「暇だし先生の顔でも見に行こうかしら」と病院を受診する方もいます。(実際にうちの祖母が言っていました。医療者の親族としては恥ずかしいばかりです。)
実際に患者数が多いので、待ち時間を患者さん側からコントロールするのは無理だと思います。
しかし唯一患者さんからできることとしては
かかりつけ医を作ること
があります。
これがどうして②早いの達成につながるのか。それは一つの病院に何度もかかると、あなたのデータが蓄積されて余計な問診を省略できるからです。
先ほどの「後医は名医」理論とも合致します。もともと何度も受診してデータがあればそのときのデータとの比較をして今の状態が悪いかどうかより簡単に判別できるのです。
かかりつけ医を選ぶ際は「うまい医者」の3点を頭において何件か近くの診療所を受診するのがいいと思います。
医師も人間。あなたとの相性がありますので、ネットレビューは意外と参考にならないものです。
そしてかかりつけ医を作ることは③安いにもつながります。
③安い
どうしてかかりつけ医を作ることが受診費削減につながるのでしょう?
まずわかりやすいものとしては「初診料」。2回目以降の受診時も「再診料」と名前を変えてお金は取られますが、値段は断然再診料のほうが安いです。
そして、先ほど述べたようにあなたのデータが蓄積されていることで何度も余計な検査をする必要がないという大きなメリットがあります。
新しい病院に行くと、その場で採血検査や画像検査をしても比較対象がないので、数日後にまた受診してもう一回という事態になりかねません。
そしてもう一つかかりつけ医を作ったうえで、さらに受診費を安くする方法があります。それは体調が悪くなったらすぐ受診することです。
「そんなこと言ったって仕事が忙しい」とか「今は我慢できてるし」など思うかもしれませんが、大きな間違い。
少しでも早く受診すると当然ですが病態が悪化する前に加療を始めることができます。そして、「投薬しても効果がなかった」「病状の変化を追うとなんだか普通と違う」など、本当に見つけなくてはならない危険な疾患の兆候に早期に気づくことができます。
多くの人はかかりつけ医みたいに気軽に受診できるところもないし、我慢できてたから、といって入院が必要なほど状態が悪くなってから受診しにのです。
この場合結局回復するまでに非常に時間がかかり、お金も目が飛び出るくらいかかります。
さて長くなりましたが、上の3点皆さんはどう感じましたか?
つまるところおすすめしたいのは
あなたが「うまい医者」だと思えるかかりつけ医を見つけ、体調が悪くなったら仕事や学校を休みすぐにかかりつけ医を受診する。
ということ。
よくよく考えると当たり前のようですが、実際の現場をみるとこれだけのことが出来てない人がたくさんいます。
かかりつけ医のような同じ医師に診察し続けてもらうことで死亡リスクが下がったという論文もあるくらいですから。
Denis J Pereira Gray, Kate Sidaway-Lee, et al. Continuity of care with doctors a matter of life and death? A systematic review of continuity of care and motality. BMJ Open. 2018
https://bmjopen.bmj.com/content/8/6/e021161
Keeping the same doctor reduxes death risk, study finds. 2018
「あなたのかかりつけ医はどこですか?」
この質問に即答できなければイエローカードですよ。
それでは次回の記事でお会いしましょう。
✳︎個人的見解が非常に多い記事になります。筆者は医師としても未熟者ですので、内容は鵜呑みにせず、不安になったら近くの医院を受診し医師に相談なさってください。